|
NEXT
|
BACK
|
DOOR
|オトナのスイッチ〜デュアルヒーローvs.専属メイドのスキンシップ〜
第3章 想い想われ不離ふられ
1.不離ふられ #4
合わせた口の間で、健朗が発した呻き声がくぐもる。伸しかかっていた躰が離れていき、息切れしていた結礼は大きく胸を上下させて喘ぐ。
健朗は膝立ちしてTシャツを脱ぎ捨てた。ベルトに手をかけながら結礼を見下ろす。
ともすれば普段は青白くも見える結礼の肌が、火照っているせいで桜色に染まっている。胸先は桜の実のように赤く尖って、健朗の慾をそそった。カーゴパンツをはだけ、ボクサーパンツを引きおろして裸体を晒す。
うっとりするほど起伏のある躰はそれだけでも結礼と違うことを示しているのに、その中心はオスであることを誇示する。結礼は、胸先が反応してしまうことも躰の中心が濡れそぼってしまうことも、そして裸体を晒してしまうことさえ、いつまでたっても恥ずかしい。それなのに健朗は惜しげもなく堂々としている。
「物欲しそうにしてるな」
健朗は避妊具を着けると、結礼のガウチョパンツのウエストに手をかけた。
云われてはじめて、結礼は恥ずかしげもなく健朗に魅入っていたことを気づかされた。何か云い返す言葉はないか探しているうちに、ショーツごとガウチョパンツを脱がされてしまう。
「健朗さまも……です」
健朗こそ隠しようがないのに。
「生意気だ」
と鼻先で笑い、あっさりと結礼の反撃をあしらうと、健朗は躰の中心に指先を滑らせた。
「あっあっ……やっ」
嬌声にくちゅくちゅと恥ずかしい音が紛れこむ。結礼はぶるぶると身をふるわせた。
「濡れてるどころじゃないな。どろどろに溶けてる」
「んふっ……わかりません」
結礼が目を逸らすと、健朗は身をかがめてきて両手で頬をくるみ、正面を向けさせる。
「脚を抱えろ」
結礼がためらうと、埋めてほしくないのか、と毒舌でも冷ややかでもなく、官能的な声が降りかかった。結礼を誘惑するのに充分足りる罠だ。
結礼はおずおずと自分の膝の裏を抱えて引き寄せる。お尻が浮いたところで健朗の慾が押し当てられ、中心を探るようにうごめく。
ああっ。
質量と強固さを見せつけるようにそれは敏感な突起をかすめ、腰が砕けそうな身ぶるいを引き起こす。中心を探るというよりは、わざと急所を外して戯れているのかもしれない。何度か繰り返され、また結礼は果てそうになる。
「健朗さまっ」
「エロい反応だな。さっきの訂正だ。感じやすさだけは優越感を持っていいって認めてやる」
健朗は焦らすようにゆったりと腰を揺らしながら、熱のこもった吐息混じりで囁いた。
結礼は無意味に首を振る。ひくひくと腰が反応するなか、健朗の突端が結礼の入り口を捉える。ぬるりとオスの先がうずもれた。
あふっ。
狙いを定めたように健朗はぐっと腰を押しつけ、結礼の中を抉じ開けて侵略する。
最初はいつもきついと感じる。今日はそれに増して、感度が繊細になりすぎている気がした。セックスが久しぶりだからなのか。窮屈だからこそ体内は健朗の形を鮮明に感じとっていて、オスに纏いつきながら逆に摩撫されているのと同じで、結礼に快感をもたらした。
やがて、最奥に到達した突端が最大の快楽点をつついた。そこからまた、自分がじわりと蜜を溢れさせたのがわかる。
「……っ、熱すぎる」
健朗は呻き、顔をしかめて吐く。苦しそうに見えるが、それが快楽の裏返しであることは結礼も学んでいる。
しばらく馴染ませるようにじっとしていた健朗だったが、行くぞ、と一気に腰を引いた。
「ぃ、やああっ……ん、はあっ」
抜ける寸前、健朗は再び腰を押しつけた。
ひどい嬌声が結礼の口から飛びだす。最奥をつつかれて力尽きたように手を投げだした。そのかわりに健朗が結礼の膝を抱えると、伸しかかるようにして中心を密着させた。お尻が持ちあがり、すると最奥だと思っていた以上に、もっと奥深くへと潜ってきて、くちゅりとキス音を立てる。
そこにどれだけの神経が集まっているのか、どうにも加減できないほどの快楽だった。息を呑んだあと、どくんと収縮が起きた。悲鳴をあげることなく、そこだけが息づいて収縮を繰り返す。ぬぷりと粘液が溢れ、健朗のオスに絡みついた。健朗の呻く声など聞こえず、結礼はイッた先の果てで快楽と健朗の存在をただ感じているだけで、感覚が飽和したように何も考えられない。
健朗は結礼の脚を腕で支えると、ベッドに肘をついてふたりの上体をさらに密着させた。そうして腰を上下させる。
「あ、あっ、あ、あ、あ……」
早くも遅くもない一定した速さがかえって感度を高めていくようだった。限界だと思っていたのに、もっと上があった。イッたばかりで過敏になった躰には酷だ。捕まえていて、と、そう乞いたくなるほど結礼の感覚は不安定になっていった。
「あぅっ……健朗さ、まっ、あ、ぅくっ……もう、無理、です! ……あ、んんっ」
「捕まってろ」
唸るように健朗が云い、結礼はうまく力のこもらない腕をどうにか上げて健朗の首に巻きつける。それに応えるように、健朗は背中の下に手を入れて結礼を抱きしめた。
激しく、それでいてゆっくりとオスを打ちつけられ、結礼は力尽きて感覚に任せた。とたん、ふたりの密着点から、ひと際大きい快楽の波が結礼を襲った。果てに到達するまで、制御不能な感覚のもと全身が硬直する。
あ、ぁああああっ。
快楽が弾けると、結礼の躰は跳ねるようにうねった。
「追うぞ。そこで待ってろ」
ストロークの速度が増したかと思うとまもなく、健朗はそのさきまで貫くように最奥を侵した直後、ぶるっと腰をふるわせた。耐えようとしても堪えきれなかった、そんなくぐもった声が健朗の口から喘ぐように漏れた。
健朗もまた力尽き、結礼の顔の横に顔を伏せた。荒い息遣いで、結礼の耳もとが熱く濡れていく。
健朗の躰の下で、結礼の躰は思いだしたようにぴくりと痙攣する。それもだんだんと鎮静化していった。結礼はかすかにふるえが残りつつ、満ち足りた吐息を漏らす。
健朗の重みは守られているような安堵感をもたらして心地よかった。ずっとこのままでいられたら。そんな希望は叶うはずもなく、けれど、眠ったのかと思うくらい長く、健朗は躰を放さなかった。
ベッドを出たのは一時間後だった。脱がすことなく、たくし上げられたままだったブラウスはくしゃくしゃになった。
以前、こういうことがあったとき、健朗は支配欲が満たされるとか云って、勝手な欲求で云い訳をした。泊まることもあるのだし、予備の服を置かせてもらえればなんの問題もないのだが、メイドの分際で、と考えてしまい、云いだせないままいまに至っている。
「美味しいですか」
ダイニングテーブルに座った健朗にお茶を出しながら結礼は訊ねてみた。
性欲が満たされれば食欲も満たされる、と云ったわりに健朗の食欲はいま旺盛だ。
おかかと梅干しという、なんの芸もないおにぎりを海苔で包んだけれど、二個ずつぺろりと消化してからカップ麺を食べているところだ。栄養は明らかに偏っている。
「これをまずく作る方法があるんなら教えてくれ」
至極まともな返答は辛辣でもある。
「明日は用事があるって、ツアーに出るまえの日なのに仕事ですか? たいへんですね」
「たいへん? のんびりしたおまえから見たら全部『たいへん』だろ……」
健朗が容赦なく結礼を扱きおろすさなか、インターホンが鳴った。
反射的にすぐ傍の壁際に行くと――
「結礼」
と、健朗が鋭く名を呼んだ。警戒心の潜んだ声で引き止めるようにも聞こえたがそれは指先まで伝わらず、直後、結礼はインターホンの応答ボタンを押した。
そうしながら足音を感じて後ろを振り向くと同時に、結礼は口をふさがれる。見上げた健朗の瞳はインターホンの画面を見て一瞬、眉をひそめた。
「はい」
結礼のかわりに健朗がインターホンの呼びだしに応じた。
『わたしよ、さと美』
「わかってますよ」
健朗が穏やかに応じると、くすくす笑う声が届く。
『お邪魔していい? 明日、来る予定だったけど、仕事が早く終わっちゃって。どうせなら今日、会いにいこうと思って。ツアーまえに今日と明日、ゆっくりすごせたらうれしいかも』
「うれしいのは僕のほうですよ。ドア解除しますから上がってきてください」
信じられない――いや、信じたくない言葉が健朗の口から飛びだす。
通話ボタンから指を放した健朗は、結礼の口をふさいだ手も同時に放す。身をひるがえしてダイニングの椅子に置いた結礼のバッグを取り、強引に押しつけてくる。
「すぐ帰れ。ただし、さと美に見つかってもらっては困る。さと美がおれの部屋に入るまで、エレベーターの向こうに隠れてろ。いいな」
まるで、浮気を隠蔽するような扱いだ。しかも、本命はさと美で、明らかに結礼は浮気相手だ。
「健朗さま……」
健朗は目を細める。
「おまえじゃなかったら計算だと思うところだ。憶えとけよ」
早く出ていけ、と健朗は追い立てるように結礼の背中を押してインターホンに向かい、エントランスのロックを解除した。
「あそこだ」
健朗は一緒に玄関を出てエレベーターホールの死角を指さす。
見上げた顔はいつもと変わらず、不機嫌そうで素っ気ない。本音を探ろうとしても、およそにおいて纏っている穏やかさか、結礼に限って見せるわがままな坊ちゃんという面持ちにさえぎられて知ることはできない。
「結礼、おかしなマネするなよ」
「……はい」
一礼をして、健朗が指示した場所へと向かう。エレベーターは上昇していて、結礼は足がもつれそうになりながらも急いだ。あとをゆっくりと健朗がついてくる。そうやって結礼がばかな真似をしないように見張るつもりなのか。
まもなくエレベーターの扉が開く。とたんに、さと美の笑い声が短く響いた。
「出迎えてくれるの?」
「さと美さんに一刻でも早く会いたかったと云ったら?」
「うれしくて飛びあがっちゃう」
直後、結礼の聞き間違いでなければ、やけに甲高く響いたのはリップ音だった。
|
NEXT
|
BACK
|
DOOR
|
(C)純愛ジュール