Sugarcoat-シュガーコート- #134

第14話 Double-Crosser -4-


 その後、たか工房でのクリスパーティは、隼斗と詩乃、そして毬亜の三人は早めに帰ったのだが、残り八人は宅配ピザを取ったりして、結局は夜の食事まで一緒にすませた。
 帰りは近くの駅まで叶多が車で送った。他人を乗せると緊張するうえに夜のドライヴ、そして孔明から真ん中に寄りすぎだと云われてちょっと左側に寄せれば歩行者に気をつけろとか、散々口出しされて集中力を削がれて疲れてしまった。
 さきに孔明たちを送ったあと、戻ってきてため息を吐けば、何かを察したらしい戒斗に笑われた。
 今度は陽からケチつけられるのかと半ば戦々恐々として、戒斗を助手席、陽を後ろに乗せてたか工房をあとにした。が、意外にも陽が運転中に叶多に話しかけることはなく、戒斗とばかり話していた。
「寿命が一年くらい短くなった気がする」
 駅前で降ろしたとたんの陽の言葉は和久井に云われたことと同じだ。孔明と違って口出ししなかったのは自分の命が惜しかったかららしい。陽の背中を見送りながら、叶多はがっくりとため息を吐いた。
「この距離で一年短くなるんなら、おれの寿命も見えたな」
 戒斗がからかって、叶多の落胆に拍車をかけた。
「酷い」
「冗談だ。問題なく安全運転してる」
「ホント? よかった。自分でも慣れてきたって思うし、今度、和久井さんからいろんなこと習いたいかなって――」
「いろんなことって?」
「戒斗がいないとき、和久井さんからジムカーナ観戦につれてってもらったことあるの。和久井さんは出なかったけど、あとでやってくれて、たぶん出たら優勝だってくらいうまいんだよ。それで、カッコいいし、あたしもやって――」
「それこそ冗談だろ。運転を一歩でも間違えれば事故る。本気で寿命が縮むからやめてくれ。自分が犬だってこと忘れるな」
 叶多に最後まで云わせず、そのうえ戒斗は真剣に一蹴した。
「やっぱり酷い」
「早く出せよ。アパートに帰るまえに有吏の家に寄ってくれ」
「え?」
「父さんに訊きたいことがある」
 戒斗の声が無表情に近く変わり、叶多も尖らせたくちびるを引っこめた。
「崇おじさんが云ったこと?」
「そうだ」
 叶多は覗きこむように首をかしげて無言で問いかけてみた。
「あとだ」
 戒斗は早く行けというように顎をしゃくった。


 戒斗が有吏家の書斎で隼斗と話している間、叶多は詩乃とリビングですごした。
 たまに詩乃から呼びだされて、那桜たちを含めて食事をする。その場にいることがあたりまえに感じるほど、叶多も馴染めていると思う。
 その実、まだ交換婚の話は消えていなくて、一方で交換婚の期限はあと一年あまりと目のまえに迫っている。
 そのことを考えると心細くなることもある。
 叶多と戒斗のことが認められたとしても、約定が翻らないとしたら、有吏一族から次の候補者が選ばれるということ。
 孔明も美鈴も悪くない。孔明はちょっと尊大すぎるところが難点だけれど、根は良心的だ。花瓶のお礼だとか、モデルデビューのお祝いだとか、何かと律儀でもある。
 相手が孔明と美鈴というのが問題ではなくて、約定のもとの交換婚ということに問題がある。自分たちのかわりに誰かがその犠牲になるのなら、ふたりでいても素直に喜べるわけがない。
 叶多がそう気づいたのはたったいまだ。
 交換婚のショッキングな実情は叶多の中でまだ生々しく、詩乃と、美鈴と毬亜の話をしているうちに自然と思い至ったわけで、やっぱり情けない。踏まれても蹴られても戒斗についていきたい気持ちは少しも変わらないけれど、自分の都合ばかりだ。
 ため息を吐きそうなのを堪えていると、戒斗と隼斗がリビングにやって来た。時計を見ると、ふたりが書斎に入ってから三〇分しかたっていない。もっとかかるかと思っていた叶多は、こんな重大事の話でも時間は無駄にしないんだとへんに感心した。


 それからすぐふたりはアパートに帰った。玄関口でちょっと躰をかがめてブーツを脱いでいると、長い髪を左側にまとめて垂らしたせいで剥きだしになった叶多の右の首筋に戒斗が咬みついた。
「ひゃっ、戒斗!」
 へんな悲鳴をあげ、つんのめったところを戒斗がウエストに腕を回して支えた。含み笑いが聞こえる。
「酒飲みたいなら、早く風呂に入れ」
「それって、あたしがアルコール中毒みたいに聞こえる」
「中毒にかかってほしいのがアルコールじゃないことは確かだ。足上げろ」
 云われるままに足を上げると、戒斗の手がブーツを片方ずつ脱がせた。
「アルコールじゃなくって何?」
「わからないのか? まだまだ、だな。行けよ」
 戒斗はため息混じりで云い、叶多の背中を軽く押した。
 戒斗が云ったとおり、まずは浴室に行って蛇口をひねり、寝室に向かった。コートを脱ぐには寒くて、着たまま風呂に入る準備をしてリビングに戻った。戒斗が叶多へとグラスを差しだす。
「お風呂に入ってからだよね?」
「気つけ薬だ。寒いだろ。ちょっとは温まる」
 透明なゴールドのスパークリングワインは気泡ガラスに似ていて、叶多のお気に入りだ。口に含んでグラスを放したとたん、くちびるについたぶんを戒斗が舐めとって、叶多はくすぐったさに笑みを浮かべた。

「何かわかった?」
 有吏の家からアパートに戻るまで、戒斗は隼斗と話したことは何も語らず、叶多がパーティのことをお喋りするだけで終わった。運転中で集中が途切れない程度だったけれど、戒斗もだからこそ、叶多の気を削がないように話さなかったんだろう。
「あとだ。それより、孔明が“励ましてた”ってなんだ?」
 あとだ、というのは今日じゃないんだろうかと思いつつ、戒斗がいつもながら忘れずに叶多のことを気にしていたらしいと知るとやっぱり“有り難い”だ。
「子供のこと、考えてた」
「……。子供? できたって? 気をつけてたはずだけどな。まあ、それは問題ないとしてだ。それがなんで励まされることになるんだ?」
「戒斗、じゃなくって!」
 話す順番を整理しているうちに戒斗が矢継ぎ早に疑問符を並べ、叶多は慌ててさえぎった。
「じゃなくて、なんだ?」
「だから、おばさんに孫を抱けるかどうかはあたしにかかってるって云われて、那桜ちゃんたちが子供を生むって難しいことだってわかって、那桜ちゃんたちのこと応援したいって簡単に宣言しちゃったけど、あたし、何も考えてなかったって反省したの」
「それが“励まされる”ほど落ちこむことかって疑問だな。拓斗と那桜は……少なくとも拓斗はそれくらい覚悟してる。おれたちがどうこう干渉したり、同情することじゃない。それより、叶多、わかってるか?」
「何を?」
「おれの立場を。おれだけじゃない、叶多の立場もだ」
「……立場って?」
「拓斗が子供を持つ気ないなら、おれにかかってるっていうことだ」
「え?」
「つまりは次々世代、おれたちの子供は一族の長という座を控えている」
 単純に子供が欲しいとは思うけれど、その子供の立場まで考えたことはなかった。叶多は目を見開いた。
「だ……だ、大丈夫かな。あたしの子で!」
 叶多は慌てふためいて叫ぶように云うと、以前に自分のことで似たようなセリフを口にした気がした。この自信のなさについても情けなく思っていると、戒斗は何が気に喰わないのか、目を細める。
「おれも、おれの目も、疑ってるのか? その云い様はおれにとっては不本意この上ない」
「そんなこと全然まったく少しもない!」
 戒斗は続けざまの否定をおもしろがって笑う。
「まあいい。だいたいがまだ方もついてないのに、母さんは気が早すぎるんじゃないのか。どういうことからそういう孫の話になるんだ?」
「それ、は……えっと……なんだっけ」
 頭の中で戒斗の躰つきに萌えたなどと云えるはずはなく、叶多は詰まったすえ惚けた。戒斗は呆れたように肩をすくめ、そして叶多の目と同じ高さまで身をかがめた。
「云っとくけど、というよりは、云うまでもなく、だ。できたときはおれに云え。間違っても渡来や孔明のほうがさきに知るってことはごめんだ。まず知る権利はおれオンリーだ」
「わ、わかってるよ!」
 戒斗の瞳がきらりと光ったような気がして、叶多は口ごもりながら思わず一歩下がった。
「もう一つ。予定外で子供ができたとしても落ちこむなんていうのは論外だ。励ましなんて必要ない」
「だから! そうだったらあたしは飛んで喜ぶよ。わかってるよね? じ、じゃあ、お風呂入ってくるから!」
 戒斗に気圧され、グラスを押しつけるように渡すと叶多はクルリと身を翻して浴室に逃げこんだ。

 手早く服を脱いで風呂場に入ると、湯気で少しは寒さが緩和されていた。湯は半分くらいしか溜まっていないけれど、ワインをちょっと飲んでいるせいか、ポカポカがおなかからじわりと広がっている。
 子供、かぁ……。
 内心でつぶやいてため息を吐いた。飛んで喜ぶ。それは嘘でもなくて、きっとそれ以上の気持ちになれる。そこは確信を持っているけれど、肝心の立場は叶多の中で蚊帳の外だった。
 一緒にいられればいい。そう思ってきて、障害物もだんだんと少なくなった気がしていたけれど、戒斗と一緒にいるためには障害物じゃなくても覚悟しなくてはいけないことがたくさんあるのだ。
 戒斗に教えてもらわなければ気づけないなんて。
 叶多はまたため息を吐いた。
 約定のことにしろ能天気にかまえてしまって、面倒なことは戒斗に任せきりになっている。それが叶多の口出しできない首脳部の決断領域であっても、一族のことをだんだんと解してきたいまなら、叶多にだって回避策を模索することくらいできるはずだ。

「風呂が叶多の按排(あんばい)所だってことはわかる。けど、さっきのいまでそのしけた顔はどういうことだ?」
 すぐ耳もとで声がして、驚きのあまり飛びあがるように身を引く。同時に向き直ろうとした反動で側頭部が浴室の壁にぶつかりそうになり、その刹那、すかさず戒斗の手が伸びてきて寸前で喰い止めた。
 湯が満ちる音と考え事のせいで気配すらも感じなかったとは、いくらなんでもどうかしている。
「へ、へんな意味じゃないよ。能天気な自分にうんざりしただけ」
 戒斗は呆れたのか一度だけ首を振り、それからシャワーに切り替えて一通り躰を洗い流すと、入るぞ、と声をかけた。叶多が急いで顔を背けると、戒斗が笑ったのがわかった。
 戒斗が浴槽に入って叶多を脚で囲みながら落ち着いたところで、叶多は正面を向いて膝を抱え、体育座りをした。

「それで?」
「戒斗、一つ訊いておきたいんだけど、蘇我の約定の相手って有吏みたいに変わることないの?」
「まさか、孔明じゃなくて貴仁だったらいいって?」
 戒斗の瞳が怪しく光り、叶多は目を見開いてプルプルと首を振った。
「そんな意味なわけないよ!」
「だな。約定は蘇我からの提案で、有吏のほうが条件付けやすい立場にいた。こっちは一族の人間なら誰でもかまわない。プラスアルファでガードを付けていいことになってる」
「そうなんだ。でも、戒斗。仲介(なかがい)のおじさんは分家がそう賛成してるわけでもないように云ってた気がするんだけど、どうして約定は決まったのかな」
 戒斗は顔を険しくすると、鏡を見ているみたいに、首をかしげた叶多と同じ側に首をひねった。
「おれもはっきりしたことはわかっていない。父さんの中に何かがあるってことは仲介主宰が云っていたとおりだ。いまにわかるだろ。それで、しけた顔の理由はなんだ?」
「大したことじゃなくっていつものこと。あたしってやっぱり気が回ってなくって、今日、美鈴さんが戒斗の相手だって気づいたの! それで余計なこと考えちゃった」
「余計なこと?」
「あたしと美鈴さんて似てるし、約定っていっても戒斗と美鈴さんの場合、あたしより障害ありそうで戒斗も燃え甲斐あるんじゃ――」
「似てるって? 八掟叶多って犬は、おれは一匹しか知らない」
 さえぎった戒斗の宣言はうれしいようで(かんば)しくない。笑うに笑えず、叶多の口もとが引きつって、それを見た戒斗が口を歪めた。それは不気味に見えなくもなく、叶多は気を逸らそうと後ろを向いて蛇口に手を伸ばした。
「叶多、止めるな。うるさいほうがいい」
 戒斗がすぐ引き止め、叶多は手を引っこめて向き直った。
「え?」
「崇さんが話したことだ」

 浴槽の縁にそれぞれ腕を置いて王様然とした戒斗は、声を落として首をかすかにひねった。無言で、聞けと命令するしぐさは尊大でいて優雅だ。
「うん」
「まず、崇さんが云った和斗というのはおれの曾祖父になる。そして、尚斗は聞いたとおり、その息子だ。じいさん――継斗の兄に当たる」
「え、おじいちゃんて一人息子だと思ってた」
「知らないのは当然だ。有吏尚斗は戦時中に死んでいて、当然おれも会ったことはない。蘇我の野望を断ちきろうとして何人もの一族が犠牲になった話をしただろ。尚斗はその中の一人だ」
「でも……」
「そうだ。尚斗は、崇さんによれば、生きていた。もしかしたらいまも生きているかもしれない」
「有吏のおじさんは知ってたの?」
 戒斗は首を横に振った。
「……どういうこと?」
「じいさんにも確かめてみた。けど、じいさんも尚斗は死んだと思っている」
 叶多が目を丸くすると、戒斗はかすかにうなずいた。
「曾じいさんと尚斗が、ずっと崇さんの父親と連絡を取りあっていたということは、おそらく曾じいさんは尚斗が生きていると知っていた。いや、知っていたんじゃない。曾じいさんはなんらかのために、尚斗を死んだことにしたんだ。もしくは別人に仕立てるのにそうせざるを得なかった」
「でも、一族に秘密にする必要があるの? 戒斗はまえに秘密を漏らすような人はいないって云ったよ? そうじゃなくってもおじいちゃんとかおじさんとか、首領って立場だったらまず一族を裏切ることなんてないし、知っててもよさそうだけど」
「“敵を欺くにはまず御方(みかた)から”って云うだろ。曾じいさんは慎重に慎重を重ねた。つまり、尚斗は連絡を取り合うことがまずい位置にいるということだ」
「どこ?」
「考えてる」
 一拍の半分くらい遅れた戒斗の返事から、心当たりがありそうな印象を受けた。
「曾おじいちゃんはどうしてそんな複雑なことしたの?」
「蘇我のことでは、自分の判断ミスを後悔していたって聞いてる。だからこそ失敗は許されないと後世まで希みを繋いだんだろう」
 それが崇の云っていた『この時』なのか。和斗は何を待って何を希んだのだろう。確かなのは、その希みを裏切るわけにはいかないということ。

「崇おじさんのお兄さんと“華ちゃん”は、曾おじいちゃんが希んでいることと関係あるの? 戒斗が云った“華乃”って誰?」
「華乃というのは母さんの姉だ」
 戒斗の答えを聞いて、叶多の脳内で素早く海馬(かいま)が働いた。
「失踪したって……それで死んだことになってる人?」
 いや、崇が云うには本当に亡くなっているらしい。戒斗はうなずいた。“華ちゃん”は有吏と繋がっていて、それなら崇の口から出てきた宿命という言葉はしっくりと合致する。
「じゃあ、華乃さんの旦那さん――えっと、崇おじさんのお兄さん、だよね。なんだか頭の中がゴチャゴチャしてきたけど……その人が負ってた宿命って何? っていうか、そのお兄さんは誰なの?」
「聞かされているのはどこかの華族出身ということだけだ」
 戒斗は曖昧な云い方をした。それ以上に答えはないようで、かすかに首をひねった。
「……もしかして、それも内緒にされてる?」
「ああ。戦後は世俗だけじゃなく一族の中もいろんなことが紛糾していた。それに紛れて、一族を立て直すまで、曾じいさんは隠密裡に何かを敷き詰めていたらしい。その中に“たか職人を未来永劫守ること”っていう(くだり)がある。曾じいさんが何を託したのかはわからない。けど、“たか”でなんらかが繋がる……いや、もしかしたらもう繋がったのかもしれない。少なくとも崇さんはそう思っている。だからおれに話す気になったんだろ」
「……たいへんなことになってる?」
「わかるだろ」

 戒斗は一言で片づけたけれど、叶多からすれば、有吏一族の身を砕いてきた境涯が急に現実味を帯びた。いろいろ聞かされてわかっているつもりだったのに、どこか自分は普通でいることに甘えている。
「なんだかすごすぎて怖い気がする」
「いつの時代も()して変わらない。いざとなったら手を汚す。有吏の男が――おれが怖いか」
 戒斗は挑戦するような口調で云い、不気味な様でニヤリとした。もしかしたら脅かすつもりでそうしているのかもしれないけれど、いろんなことを経てきたいま、叶多が戒斗のことを怖いと感じることはない。
「ううん、そういうんじゃなくて。一族が実際にどういうことやってきたかってことがわかって、身近になった感じがして、そしたらあたしってすんごく……えっと、場違い?」
「素っ頓狂だってのは否定しないけど、叶多はそれでいい」
「……やっぱり喜べない」
 叶多が口を尖らせると、戒斗は吹くように笑い、それから深々とため息を吐いた。
「蘇我から約定を迫られるまえに知ったのは救いだ」
「どうなるの?」
「どうにもならない。答えはNOに決まっている。そのために絶好の口実ができたってことだ」
「……そう?」
「ああ」
「よかった」

 戒斗の返事は確信に満ちていて、祈りを捧げるように合わせた手をくちびるの前に持ってくると、叶多は笑みを浮かべた。戒斗が浴槽の縁から腕をおろして叶多の手首をつかむ。手首を分離してその間から迫ってくる戒斗の顔つきはえげつない。叶多はハッと目を見開いた。
「戒斗! のぼせちゃいそうなのっ」
 勘の鈍さは天下一品でも、生命の危機になると、犬の本能が百パーセント機能するらしい。生命の危機というのは大げさかもしれない。けれど、あの気絶する一瞬はそれに等しい。
 もとい、えっちのときは戒斗が怖いときがある。いまはそのときだ。
「だな。顔が赤い。早く出ろ」
 無理強いするかと思えば、拍子抜けするくらい戒斗はあっさりと手を放した。
 悪魔化してたのは見間違い? 飲んだのはほんの少しなのにお酒が効いてて動物的勘まで鈍ってるのかも。
 見ないでと云っても戒斗がきかないのは知っていて、加えて気が変わらないうちにと叶多は疑問に思いつつも急いで浴槽から出た。

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