Sugarcoat-シュガーコート- #53

第7話 No one is perfect. -3-


 鍵、どこに入れたんだっけ。
 ドアの前に立ってそう思うと、ふと叶多は気落ちして途切れ途切れの記憶しかないまま帰り着いたことに気づいた。
 上の空でも帰ってくる場所がこのアパートであるあたり、すっかり自分の家になったんだな、とのん気に感動したけれど、それもつかの間のことで、叶多はすぐ現実に立ち返って深々と息を吐いた。
 鍵の記憶をたどっていくと、今朝は急いでいて、いつも入れるバッグのファスナー付きの内ポケットではなく、サイドポケットに放りこんだことを思いだした。
 落とさなくてよかったと思いつつ鍵を取りだしたとき、こっちに向かってくる人の気配を捉えた。

 横を向くと、戒斗くらいに背の高い男の人が迷いなく近づいてくる。
 綺麗な顔立ちなのにどこか荒っぽく、それが近寄りがたいような陰を感じさせる。どこかで見たような気がした。
 真理奈の部屋の前まで来て立ち止まると、彼は問いかけるように少し首を傾けた。真理奈の部屋を訪ねるふうではない。
 間近で見ると、年も戒斗と同じくらいだと見当がついた。
「……戒斗のお友だちですか?」
 彼は叶多を上から下まで一通り眺め、手にしている鍵に目をやるといきなり笑いだした。
 (いか)つい感じが一気に砕け、まるで十代の少年みたいな笑い方だ。

 おかしな格好をしているんだろうか。ユナは何も云ってなかったけど。まさか、短いスカートが(まく)れてパンツが見えるなんていう小学生のときに経験したような失敗しているとか……。
 叶多は慌てて自分の格好を見下ろしてみた。

「ああ、ごめん。叶多ちゃんだろ? 戒斗の“紫の君”に五年越しでやっと会えて感激してる」
 彼は源氏物語を引き合いに出すと、再び叶多を一巡りした。感激という言葉とは別に何か違うもの、最初に感じた陰みたいなものがその瞳によぎった。
 どうやら初対面らしいことは彼の云い方からわかったものの、会ったことのある感覚は抜けずに叶多は首をかしげて考えた。
 答えが出ないうちに真理奈の部屋のドアが開いた。
「聞いた声だと思ったら。祐真、めずらしいじゃない」
「真理奈さん、久しぶり」

 真理奈の『ユウマ』という呼びかけに続き、彼が真理奈を振り向いた横顔を見て叶多は誰だかようやくわかった。
 テレビに一切出演することなくも、若年層を中心にして圧倒的な支持を受けているソングアーティスト、“ユーマ”だ。その横顔は叶多が持っているCDジャケットに写っている横顔とまったく同じだ。
 FATEがユーマと仲のいいこと、それ以前にFATEの生まれるきっかけがユーマによるものだということは戒斗から聞いて知っていたけれど、実際に会ったのははじめてだ。

「あ、ユー……!」
 叶多が驚いて声を上げかけたところで、今度は目の前のドアが開いてぶつかりそうになり、慌てて一歩下がった。
「戒斗、いたの?」
「ああ。予定より早く終わった」
 叶多のびっくり(まなこ)を見下ろして答えると、戒斗は部屋から出てきて通路へと目を向けた。祐真が目に入った戒斗の表情に複雑さが垣間(かいま)見えた。なんだろうと叶多が読みとる間もなく、戒斗は笑みに取り替えた。
「何やってんだ?」
(わたる)たちから叶多ちゃんのこと聞いてさ、お披露目が待ちきれなくて会いにきた」
 祐真の返事に戒斗はため息混じりで笑い、
「入れよ」
と促した。
「じゃ、私も! 叶多ちゃん、お帰りなさい」
 戒斗のたしなめる視線にもかまわず、真理奈は便乗して祐真のあとからさっさと部屋に入っていく。
「叶多」
「あ、ただいま」
 半ば唖然とした叶多は我に返って戒斗に答えた。戒斗が少し首を傾ける。無言の催促にそって叶多がハグすると、同じように返した戒斗が小さく笑った。
「ちゃんと紹介するよ」
 戒斗は閉まりかけたドアを支え、叶多を先に促した。

 それから和室にそろうとあらためて紹介され、しばらくは航から聞かされたことを持ちだされて祐真にからかわれた。厳密にいえば叶多に対してよりは戒斗をひやかしている感じだ。
 祐真は独特の価値観から捉えたメッセージを秘める歌、さみしくなるほど愛していると告げる歌を奏でる。そこからは想像できないくらい、目の前の祐真は気さくでおどけている。
「久しぶりに二人のギター連奏、聴かせてくれない?」
 当然のように音楽の話題に流れていくと、真理奈が云いだした。
 戒斗は問うように祐真を見やる。祐真は首をクイと傾けると、いいよ、と快く応じた。戒斗はベッドルームからギター二本を取ってきて、一本を祐真に手渡した。
「何がいい?」
 指慣らしに音を軽く出しながら祐真が訊ねると、真理奈は考えこむようにちょっと上を見上げる。
「そうね……普段、聴けない祐真のラヴバラッド、“Rising Moon”はどう?」
 真理奈がリクエストを出したとたんに祐真の表情が止まったように感じたけれど、気のせいだったのか(まばた)きしたあとに見えたのはそれまでと変わらないちゃらけた祐真だ。
 わくわくして真理奈の返事を待っていた叶多は聞いたことのない曲名に首をかしげた。
「Rising Moon、て?」
「叶多が知らないのは当然だ。ライヴアンコール限定の歌で、CDにもライヴビデオにも載らない曲」
 祐真と同じように弦を(はじ)きながら戒斗が説明すると叶多は目を丸くして驚いた。
 祐真はかすかに笑みを浮かべた。
「せっかくライヴに来てくれるんだからさ、なんか特典あってもいいと思わない?」
「あたしも今度行きたい」
 叶多は祐真に同意してうなずきながら、うらやましそうに云った。

「んじゃ、特別に歌付きでやろうか。戒斗と叶多ちゃんの同棲生活出発のプレゼントに」
「ホントに?!」
「ほんと。戒斗、輪唱(ラウンド)してくれれば最高だ」
「オーケー」
 祐真が小さな声でカウントをとり、ギターを弾き始めると二小節遅れて戒斗もメロディを奏でていく。楽譜なしでも寸分のブレもなく音は流れ、追いかけられる音と追いかける音が恋人たちの戯れのように切ない。ユーマしか表現できないラヴバラッドは素朴(そぼく)なアコースティックギターの連奏で余計にじんと胸に響いた。
 違う世界に入ったようにうっとりとしたまま、二小節遅れの戒斗の音で曲は終わった。
「どうだった?」
「すごい。なんだか感動」
 叶多の潤んだ瞳を見た祐真は、よかった、と笑った。
「お得よねぇ。プロの演奏をナマで、しかもイイ男の顔を間近で眺めながら聴けるんだから。ほんと、戒斗についてきてよかった」
 真理奈は(うら)らかな口調で云い、戒斗の腕を(つつ)いた。戒斗は鼻先で笑う。
『ついてきて』という言葉に違和感を覚えなくもないが、叶多にとっても戒斗はともかく――というのももったいない云い方だけれど、ユーマを生で近くに見られるというお得感は最上級だ。

「じゃ、称賛をもらったところでサービス。戒斗、即興でFATEの“Stepwise”をめちゃくちゃハードにアレンジだ」
「やるのはいいけど、苦情来たら処理してくれよ」
「文句じゃなくて(うな)らせるくらいの音、あんたたちなら出せるでしょ」
 真理奈に()きつけられ、祐真はにやりと応じた。
 祐真は弦を確かめながら指を配置し、ギターのボディをさっきよりは早く軽く叩いてカウントをとってリードした。祐真が意図するリズムをつかんだ戒斗がタイミングを計って合流すると、エレキギターに負けないほどの音が部屋中に広がっていく。指先の流れるような動きに見惚(みと)れた。空気中から音の震動が躰に伝わってくる。
 まだまだ!  そう叫びたいくらいに壮快な気分が募っていく。
 終わりにさしかかると、戒斗と祐真が顔を見合わせてカウントを取るように頭をかすかに振る。ふたりそろって、弦を弾く左手を振りきったと同時に曲が終わった。
「やっぱり、あんたたちってサイコーよ!」
「すごいよ、戒斗!」
 叶多は真理奈とそろって痺れがくるくらいに手を叩いた。
 戒斗と祐真は叶多たちの反応に満足したようで、声を出して笑い合った。その戒斗の笑い方は祐真と同じように少年みたいに無邪気だ。

「戒斗、やっぱ、おまえは最高のアレンジャーだ」
「所詮、アレンジャーだ。クリエーターのおまえには負けるよ」
「クリエーターになれるさ。戒斗にその気があれば」
「相変わらず、乗せるのがうまいな」
 戒斗はふっと笑みを漏らして叶多を見やった。
「こうやって祐真から乗せられて“戒”が生まれた」
「乗せられたくらいでここまで来れるって、戒斗はなんでもできちゃうから……」
 そう云いかけて、叶多ははた(・・)と目のまえに迫る自分の立場を思いだして表情が止まった。
 なんでも器用にこなす戒斗に比べてあたしは……。
「叶多、どうした?」
「……どうもしてないよ。うらやましいって思って。祐真さんもちゃんと才能あって、真理奈さんはすっごく綺麗だし」
「あら、光栄」
 真理奈は戒斗を見やってからまた叶多に視線を戻すと、可笑しそうに口を挟んだ。
「あたし、何もできないから……それより、迷惑かけてることのほうが多いかも」
 泣きたい気持ちが甦って、叶多は笑ってごまかした。
「お料理、うまいじゃない。ガラスもステキよぉ。ねぇ、戒斗」
 真理奈が誉め返したが素直には喜べず、叶多は曖昧に笑った。
 同意を求められた戒斗は、そうだな、と答えながら探るようにそんな叶多を見つめる。
「うれしい。じゃあ、もう五時半過ぎてるし、お料理しなくちゃ。祐真さんも一緒に」
 叶多は戒斗の注意を逸らすように立ちあがった。
 戒斗をごまかせるとは思っていないし、話しておくべきことだともわかっているけれど、今日は無理だ。自分で整理できていない。
「邪魔しちゃ――」
「気にするな。こいつはいつも邪魔してる」
 祐真をさえぎって戒斗は真理奈を指差した。
「私は奉仕料を取り戻してるだけよ」
「なんだ、それ」
 祐真は呆れたように突っこんで、その向かいで戒斗が顔をしかめた。

 叶多は真理奈が口にした『奉仕料』を気にするも、目下、自分のことのほうが重大事であり、流しに立ってため息を吐いた。
 こういうときは脱線しやすい自分の性格をフル稼動させるしかない。いつまで効力があるのかは疑問だけれど、とりあえず『うまい』と誉められた料理のことを考えて問題は後回しにしようと叶多は自分に云い聞かせた。
 急に人数が増えたときはご飯物がらくであり、叶多はピラフに取りかかった。
 米を洗ってから、(もと)を利用した鶏がらスープを作って冷ましておく。お手軽コースで、あとから混ぜこむミックスベジタブルのバター炒めをすると香りがたちこめ、憂うつを飛ばしてくれるくらいに叶多の食をそそる。ちょうどお腹がいちばん空く時間だ。
 しばらくは順調にいっていた料理も、下ごしらえで玉ねぎのみじん切りをしていると、やっぱり注意力散漫になっていたのか、包丁の刃が人差し指の爪に当たった。
 小さく声を上げ、包丁を置いて指先を見ると、爪に傷が入っているくらいで身までは到達していない。
 よかった。お料理くらい集中してやらなくちゃ、ほんとになんにもできないって思われちゃう。
 そう思っても、賑やかな声を背後に実質は独りのような状況にあり、思考を中断してくれる人はいなくて考え始めると止まらなくなる。
 うだうだしながら、ベーコンと玉ねぎを炒めている鍋の中に、洗っておいた米を入れた。米が少し鍋の縁にくっついて、無意識で叶多は指を伸ばした。
「あっ……ちっ」
 鍋に指が触れたとたん、ステーキを焼くときのようにジュッと鳴った気がした。指の腹を見ると、指紋ははっきりしていて(ただ)れてはいない。少しだけ中からじんじんと(うず)いてくるくらいだ。

「何やってる」
 背後からいきなり声がかかり、驚きが冷めきらないうちに戒斗が叶多の手をつかんで開いた蛇口の下に持っていった。
「大丈夫。大したことないよ」
「火傷を(あなど)るな。表面は大したことなくても中からやられることもある。冷やしておいたほうがいいんだ。最低五分だ。これはどうすればいい?」
 戒斗は鍋を指差す。
「お米が透明になるまで炒めるだけ」
「おれがやってるからしばらく冷やしてろ」
「……うん」
 叶多はそっと息を吐く。
「どうした?」
「……え?」
「つまずいてるから」
「あたしはつまずいてばっかりだよ」
 ちゃかして叶多が答えると、戒斗のくちびるも笑みに歪む。
「そうだろうけど、料理はいつもちゃんとやってるようだし」
 戒斗のフォローはなぐさめになっていない。
「酷い」
「それで?」
 戒斗がいつもの言葉で促した。戒斗がこうやって気にかけてくれることを知ると、叶多はまったく悪い意味で名実ともにある自分の馬鹿さかげんが恨めしくなる。
「ううん……課題が出て、ちょっと考えてるだけ」
「学校?」
「うん」
 叶多の云いたくない気持ちを察したのか、戒斗はそれ以上、追求しなかった。
「自分で解決できないときはちゃんと云えよ」
 しばらくしてから云った戒斗の言葉は叶多を少しらくにさせる。
「うん」
 うなずきながらした返事はさっきよりは声のトーンが明確になって、叶多は素直な笑みを浮かべて戒斗を見上げた。
「いいわねぇ。らぶらぶ、で」
「五年も待ってるくらいだから当然だろ。なぁ、戒斗」
 真理奈と祐真が背後から茶々を入れる。
 顔を赤くした叶多と違って戒斗は打ち合わず、焦がさないようにとしゃもじを動かしながら、ふんと軽く鼻であしらった。
 五分たったかと思うくらいに水を止めると疼きもなくなっている。
「もう平気。あたしがやるから、向こう行ってていいよ」
 一人増えただけでさらに賑やかになった夕食は時折、憂うつになりながらも叶多にも楽しい時間だった。

「叶多ちゃんて……ほんとに似てるよ。戒斗が云ってたとおり」
 真理奈が帰ると、祐真が寂然(せきぜん)とした笑みを叶多に向けて云った。
「似てるって誰にですか?」
「おれの従妹、昂月(あづき)。おれの親が死んで、それから一緒に住んでるんだ。戒斗から聞いた?」
「はい」
「今度、青南大を受験するんだ。人見知りするからさ、叶多ちゃんと同い年だし、仲良くしてくれるとうれしいな」
「……もちろん、です」
 どうしてよりによって青南大学の話になるのだろう。
 叶多はまた奈落の底に落とされた。
「助かるよ」
「それくらいお茶の子です」
 難関を越えられれば。
 叶多は心の中で付け加えた。
「叶多?」
 また沈んだ顔を顕わにしたようで、叶多は慌てて笑みにすり替えた。
「片づけるね。祐真さん、ビール、もっと飲みますか」
「もういいよ。ありがとう」
 叶多は和室のテーブルに並んだ食器を流しに持っていった。

   *

 戒斗は片づける叶多を注意深く見守る。
 何かあったのは明らかだが、無理やりに訊けば叶多のプライドを傷つけることには違いなく、普通に考えてもその気持ちを尊重しなければならない。
 祐真に対してもそれは同じだ。
 もともと深く考えるタイプの祐真は一年くらい前から精神的に落ち着かなくなり、だんだんと酷くなっている。叶多の前のせいか、今日はそうなる前の祐真とあまり変わらない。
 食い入るように叶多を見ていること以外は。
「祐真、叶多に手を出すなよ。おれのもんだ」
 祐真はゆっくりと叶多から視線を外し、戒斗に向いた。祐真の口もとだけが笑みをかたどる。
「あん時の戒斗と同じだ。おまえの云うとおり、叶多ちゃんのほうがちょっと元気な感じがするくらいで印象が似てる」
 その答えからも祐真が叶多に昂月を重ねていることは確かだ。
 祐真は自棄になっている理由を誰にも語ることはない。
「ふられたのか?」
「そのほうがラクかもな」
 祐真は自分を嘲るように口を歪めた。
 戒斗はしばらく待ったが結局、祐真は語らず、吸っていた煙草を灰皿に押しつけた。
「帰るよ。また来る」
「ああ」
「叶多ちゃんに見送ってもらっていいか?」
「……(さら)わないでくれるんなら」
 ふざけながらも戒斗の瞳は笑っていない。
 祐真は立ちあがりながら、おもしろがって戒斗を見下ろした。
「そういう勇気のある奴がいたらお目にかかりたいな」
「そのまま返す。叶多、祐真がおまえに送ってほしいって」
「え? もう帰るんですか?」
 叶多は手を拭いて、玄関に行く祐真を追いかけた。
「祐真、おれはいつでも聴く」
「わかってる。じゃ」

   *

 叶多は二人の会話を不思議に思いながらも祐真のあとをついて行った。
「叶多ちゃん」
 祐真は歩きながら叶多に呼びかけた。
「はい」
「叶多ちゃんから見たらおれもうらやましく見えるんだ?」
「当然です。何か才能があるってそれだけでラッキーな気がする。戒斗はいろんなことをあっさりとやってのけちゃうけど、それに比べてあたしなんて満足にできるものないし、反対に戒斗の足引っ張ってるようなものだから」
 真剣に卑下(ひげ)している叶多を見下ろし、祐真は小さく吹きだすように笑った。
「おれもそうだし、昂月もそうだけど、叶多ちゃんも自分の力を信じきれてないんだな。そのうえ、戒斗を誤解してる」
「誤解?」
「そう。叶多ちゃん、なんか悩んでるようだ」
 叶多は祐真のとうとつな言葉に驚いて立ち止まった。
「今日、会ったばかりなのに、あたし、そんなに露骨ですか」
 戒斗に隠せないはずだと思いながら叶多が問うと、祐真は立ち止まり、肩をすくめて微笑んだ。
「おれは人の感情を読みとろうとする癖があるから。一つ、叶多ちゃんに課題をあげるよ」
「え?」
「誰もがのうのうとやっているわけじゃなくて、例えば叶多ちゃんが戒斗のことをそう思ってるとしたら、叶多ちゃんは戒斗を見縊(みくび)ってる、ということになる」
「……祐真さんの云うこと、難しいです」
 叶多は困ったように祐真を見上げた。
「これは高弥と良哉の受け売り。おれが云われたことなんだ。叶多ちゃん、競争しよう。真に理解できるか。それが課題だよ」
 そう云い残すと祐真は、ここでいいよ、と階段の手前で叶多と別れて帰っていった。

BACKNEXTDOOR


* 文中の歌【Rising Moon】は当サイト内menu◆poetry−うた−◆に収録中