NEXTDOOR|淫堕するフィクサー

prologue ジャンクション


――彼がどうなってもいいんですか。
――かまうなっ。
――かまわないわけにはいきません。ここまで育てあげるのに、どれだけ尽力してきたと思っているんです?
――おれは……っ。
――頼んだ憶(おぼ)えはない、と?
――……くっ。
――そうです。あなたが望んだのですよ。我々はそれを叶えてさしあげた。ほら、もうすぐ目が覚めるみたいですよ。本当のあなたを見てもらいましょうか。
――やめろっ。う、わぁああっ……やめ――

「――てくれっ」

 厚いフィルターの向こうから聞こえていた声が、いきなりクリアになったかと思うと、パッと意識が覚めた。
「やっとお目覚めですか」
 したりげな声が耳もとをくすぐる。ぞくりとする感覚を肩をすくめてやりすごしながら顔を背けた。
「おやおや、あなたも敏感ですね。その様子では……」
 思わせぶりに中途半端に言葉を切り、後ろに立つ男の手が顎(あご)をつかみ、くいと顔を上げさせる。
「おふたりで愛し合うのはさぞかしたいへんだったのでは?」
 続けて揶揄(やゆ)した声がなおも耳の奥をくすぐり――いや、顔を固定されていてさっきよりも容赦(ようしゃ)なく、寒気に似た感覚が全身に及んでいく。下腹部が疼(うず)いた。
「ほら、見てご覧なさい」
 男のもう一方の空いた手が人差し指を立て、まっすぐ正面へと向けられた。
 釣られたようにそこを見やった。
 夢の中で聞いていた声の現実を知り、信じられないような気持ちで目を瞠(みは)った。直後に再び顔を背けようとしたが、顎をつかむ男の手がそれを許さなかった。
「目を逸(そ)らさないでください。彼を助けたければ」
 その忠告とも命令とも取れる言葉に逆らってはいけない。本能がそう察した。
「あっ……もぅっ、おれは嫌だっ……う、はっ」
「とても『嫌』だという反応ではありませんよ。濡れすぎではありませんか」
 正面にいる彼の背後には男が立っている。くっくっと含み笑い、愉快そうにしているのはおそらく背後にいる男もそうだ。
 彼は万歳をする恰好(かっこう)で天井からぶらさがる鎖(くさり)に繋(つな)がれ、下半身は床に固定された台に膝(ひざ)を縛られて大きく脚を広げている。そうして真後ろに立った男が躰(からだ)を揺するたびに、男に貫かれた彼もまた揺れていた。
 宙に浮いた彼の躰を支える必要はなく、男の左手は乳首を摘(つ)まんで小刻みにいたぶり、右手は彼の中心をつかんで扱(しご)きあげている。彼のオスの先端から粘液が滴(したた)り、糸を引いていた。
 それは見たことのない姿だった。
「ほら、彼、目が覚めたみたいですよ。自分を曝(さら)けだしてラクになることです」
「やめて、くれっ」
「おや、いいんですか、やめても? そうしたら二度とお目にかかれませんよ、会いたくても」
 とたん、彼は歯を喰い縛り、宙を睨(にら)みつける。だが、それもつかの間。
 うわぁああっ。
 まるで痛むように彼は叫んだ。
 男の左手が胸元から離れ、オスの先端に爪を立てるようなしぐさをしたのだ。彼はびくんと躰を跳ねるように動かし、直後、先端から淫水(いんすい)をまき散らした。一度では終わらず、男が指で擦るたびに淫水が飛び散る。
「やめますか」
 男がにやついて訊ねている。そうして何かを耳もとに囁(ささや)いた。すると。
「……やめないで、くれ……」
「云い方にはお気をつけください」
「くっ……お願い、します。もっとめちゃくちゃに……感じさせてください」
 彼は振り絞るように訴えた。

NEXTDOOR

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