Cry for the Moon 〜届かぬ祈り〜

序  奏


おれを襲うディレンマ。


無償の愛を受ける喜び。
(そば)にいてほしいと望む心。
後悔という名の断罪。

罠を仕掛けたのはおれだった。

兄としてではなく、男として触れたかった。


深く淀んだその傷痕は癒されることのないまま、
季節(とき)は廻り合うために移りゆき、おれを導いた。


その結末はけっして望んだものではない。

ただ、廻り合った彼女の存在は追い求めた安住の地であり、
(わず)かな時間ではあっても、凝縮された無限の至福に包まれた。

おれが懺悔(ざんげ)するのは、傍にいてやれなかったこと。

彼女が真に生きたいと願うまで……せめて――。

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