愛魂〜月の寵辱〜

第3章 宴utage−不浄の烙印−
#1

 吉村から背中を押されて浴室を出ると、そこにいた男を目にして立ちすくんだ。毬亜は人がいたことをすっかり忘れていた。
 裸は浴室に入るまえにも見られていたし、自分の躰なのにけっして自分の目では覗けない、恥ずかしい場所に恥ずかしいことをされるのもきっと見られている。あるいはこの若い男がやったのかもしれない。加えて、叫び声と啼き声に満ちた浴室で何が行われていたのか、毬亜が快楽に浸かっていたことも見当はつくはず。
 ふたりの目が合う。その視線が素早く毬亜の下腹部までおりたことは見逃せなかった。
 そこはもともと濃くはなかったけれど、子供みたいに丸見えになってしまうと、幼い頃には感じなかった羞恥心に襲われる。
「嵐司、マリの躰はどうだ? そそられるか」
「いちおう男ですから」
 躰の具合を聞いているような、平常心を保った会話がなされた。
 若い男が嵐司なら、もう一人の二十代後半くらいの男が謙也なのだ。ふたりに対する吉村の気配は微妙に違っている。
 吉村は含み笑い、背後から毬亜の胸をすくう。浴室であらぬ性遊戯を経験させられたくせに、胸を触られるのははじめてで、そんな驚きのもと毬亜はびくっとした。
「この歳の小娘にしては完成された躰だろう。乳房(ちぶさ)はおれの手にちょうどいい大きさだ。乳首を見てみろ。触ってもいないのに起(た)っている」
 吉村はまた毬亜を辱める。嵐司の視線を避けようとうつむいたものの、吉村の腕が邪魔して躰を隠すことはできない。それどころか目を伏せたせいで、大きな手にしぼられた胸先が、吉村の云うとおり両側とも赤く尖っているのが見えて、居たたまれない気持ちにさせられた。
 ふと、吉村の親指が浮いたかと思うと、熟れた粒を弾いた。
 あっ。
 躰がまえにのめったところで親指は乳首をしっかり捕らえ、押しこむように捏ねる。
 んあっあっ。
 膝がかくかくとふるえて砕けそうになる。
「感度も文句ない。どうだ?」
 恥じ入る気持ちをそっちのけにして、毬亜は簡単に感じてしまう。吉村は、どうだ? と、そんな毬亜をどうしたいのか、嵐司にどんな答えを求めているのか。
「見てはいませんが聞こえていました。手練手管、教わりたいですね。女を手懐けるには最も有力な手段です」
 吉村のこもった笑い声が頭上にこぼれる。
「女を抱いたことはあるのか?」
「お節介な連中がいるので」
「まあ、二十二にもなってまだ坊やだってほうが驚くが」
 そう云ったあとの吉村の吐息は、笑っているのかため息なのかわからない。なんとなく毬亜は曖昧だと感じた。
「嵐司、根っから裏に生まれただけのことはあるな。おまえの自制力がうらやましいと思うときがある」
「丹破一家の若頭(かしら)は、如仁会随一の切れ者だと定評があります。一月さんにそうおっしゃっていただけるのは光栄ですが、買い被りすぎです。不足しているものがあるからこそ、父はおれを外に出すんです。一月さんに教わらせていただきます」
「如仁会の藤間(とうま)総裁の達(たっ)ての要請だ。盗むものがあれば遠慮なく持っていけ」
「ありがとうございます」
 嵐司が一礼すると吉村は腕を放し、差しだされたタオルを受けとった。毬亜の躰を軽く拭き、吉村は自分もそうすると、用意されていた下着と濃いグレーの甚平服を纏う。裸のまま何もしないで待っていた毬亜に向かい、また「いい子だ」とつぶやく。
 次に嵐司から受けとったのは白いガウンで、毬亜はそれを着せられた。
 パウダールームを出ると、入り口には謙也に加えてもう一人が待機していた。ふたりが自分に向かい黙礼するのを見届けた吉村は、毬亜を振り返って見下ろす。
「ついてこい」
 そうするしかないのにわざわざ云うのはどういうことだろう。
「はい」
 身をひるがえして歩きだした吉村のあとを追った。毬亜のあとを三人がついてくる。
 途中の分岐点で、あの母がいた部屋のほうではなく吉村が玄関のほうに向かったときにはほっとした。もしかしたら、同じ目に遭うかもしれないと思っていたからだ。
 しばらくすると前方から別の足音が聞こえてきた。吉村の背中が壁になって姿は見えない。男が立てる足音ではないという推測は――
「一月、来客みたいだけど何事かしら」
 という女性の声が裏づけた。
「姐(ねえ)さん、おかえりなさい」
 吉村は立ち止まり、深くお辞儀をした。
 吉村にそうさせる女性とはどんな人だろう。そう思いながら目に入ったのは、三十代ないし四十代という年齢不詳の艶(あで)やかな女性だった。
 胸もとまである髪は大きくカールして、二重の目とルージュがくっきりとした顔を強調している。可憐という印象の母と、この女性の艶美さは相対している。
 意志をしっかりと宿した眼差しはきつい。毬亜は顔から躰までじろじろと観察され、ガウン一枚であることを心もとなく感じた。
「この子は何?」
 吉村が上体を起こす間に、彼女はすたすたと近づいてきた。香水がぷんと漂い鼻をつく。
「蒼井加奈子の娘です」
 吉村が簡潔に紹介すると、毬亜は挨拶をしていないと気づいて慌てて頭を下げた。
 へえ、と冷たい響きで相づちを打ちながら、彼女はあらためて毬亜を上から下まで眺める。そのしぐさに、さっきの視線にはなかった毬亜への興味が見えた。
「まさか宴(うたげ)なの?」
「ええ」
 吉村はどちらともつかない返事をする。
「まだ子供でしょ。といっても……」
 中途半端に言葉を切った彼女は、あからさまに見下した笑みを浮かべた。
「あの女の娘なら、歳なんて関係ないのかもね。わたしも覗かせてもらおうかしら」
「楽しいものではないと思いますが」
「いいえ。わたしがあの女を追いだしたがってるのは知ってるでしょ。それなのに娘まで連れこむなんて。でも誤解しないで。あの人があの女のことをどう思おうとわたしはどうだっていいの。つまり、理由はほかにあるってこと。一月、わかってるわよね」
 彼女は、じゃああとで、と最初から吉村の返事は不要だったように毬亜の隣をすり抜けていった。
「せいぜいお楽しみなさい」
 そんな言葉を云い捨てて。
 毬亜のなかからさっきの安堵は欠片もなくなった。

 女性の足音が遠ざかり、その背を目で追っていた吉村は毬亜へと視線を転じた。
「丹破艶子(にわつやこ)、総長の妻だ」
 知りたかったことを端的に教えられた。
 ここが男社会だとは理解している。そのなかで、姐さんと呼ばれる艶子がどれだけの権限を持っているのか、母の待遇とはまるで雲泥の差であるのは歴然だ。妻と情婦、その立場を考えれば比べるまでもない。
 艶子が母を嫌っていることを思うと、娘の毬亜のことも当然、好きにはならないだろう。ここが毬亜の世界になるとしても生きにくいことは確定された。
 毬亜は口を開きかけて閉じた。
 あたしはどうなるの? これから何を楽しめというの?
 吉村に訊ねても答えは返らないだろうし、聞いて避けられるものでもない。
 毬亜は浮遊しているような頼りない気分で吉村のあとを歩いた。
 そこを折れれば玄関に行くはず、と思った分岐点の手前で吉村は廊下の端に寄った。引き戸がすっと開けられる。すると、そこには部屋ではなく階段があった。地下室があるのだと察した瞬間に、閉じこめられるのかもしれない、と毬亜はそんな恐怖を覚える。
「吉村さん」
 思わず吉村を呼びとめた。
「命を脅かすわけでも地下に閉じこめるわけでもない」
 それなら何しに行くの?
 そんな疑問が浮かぶような応え方だった。
 立ちすくんでいるとふいに躰がすくわれる。横向きに抱かれて毬亜は無意識に吉村の首にしがみつく。何も見たくない。そんな気持ちのもと、目をつむって吉村の首に顔をうずめた。
 階段をおりていき、空気が微妙に変わっていくなか、弾むような振動がなくなる。ためらいがちに顔を上げると、階段をおりきったところにいて、そう奥行きのない廊下が見えた。照明はあるものの、剥きだしのコンクリートの壁に挟まれて、冷たく薄暗い印象を受ける。
 吉村は毬亜の脚を床におろし、自分の首から腕を外した。
 腕をつかんだまま、吉村の目がじっと毬亜の目を捕らえる。
「これからさき、おれに助けを求めるな」
 どういう意味だろう。
「でも、」
 当てにしていいのはおれだけだ、そう云ったのは吉村だ。そう云い返そうとした言葉は一瞬のキスでふさがれた。そうして、突き放すように腕から吉村の手が離れていった。
 吉村は廊下を進み、奥にも戸があるのかどうか、最初に見えた木目の戸を開けた。
 部屋のまえで座るという畏まったこともせず、そこには、少なくとも京蔵はいないのだろう。そう思いながらためらいがちに室内を覗くと、静けさが示しているとおり板張りの部屋にはだれもいなかった。
 母がいた部屋のように広くもなく、いちばんに目についたのは病院の診察台のような幅の狭い台だ。ベッドというにはシングルサイズにも満たない程度で、部屋の真ん中にあるが床に固定されているわけでもない。けれど、ただの台でないのはひと目でわかる。台の脇には付属品がいくつも取りつけられている。
 天井には鉄の棒が格子のように通り、それに取りつけたシーリングライトは写真スタジオのようにあちこちを向いて部屋を明るくしている。壁にも所々にあった。その四方の壁のうち一面だけ、大きな鏡が貼り付けられている。隅のほうに固まってある物体はなんだろう。処刑台のようにも見え、毬亜はあえて目を逸らした。
 浴室であったことと似たようなことがここでも行われる。もしかしたら、際限なく。助けを求めるな、というのがとことんやるという意味なら符号する。毬亜はまだヴァージンだし、はじめてが苦痛を伴うことは知っている。
 部屋のなかに入った吉村は手招きするわけでもなく、振り向くだけで無言の命令をくだした。毬亜は一つ呼吸をして部屋のなかへ進んだ。戸の閉まる音に振り向くと、あとをついてきていた三人はそのまま戸の向こうにとどまったらしい。浴室のときと変わらずふたりきりだとわかっていくらか気がらくになった。
 吉村のところへ行くと、ウエストの紐がほどかれてガウンが肩から落とされる。
 クーラーの効いた空気は裸体には少し冷たい。肩をすくめると吉村に抱きあげられて台の上に寝かされた。黒いカバーをした台はクッションが程よく効いているが、ナイロン製なのか、クーラーの風で少し冷たかった。
 手が取られ、台の脇についた幅広いバンドで手首をくるまれた。マジックテープで緩くもきつくもなく止められ、肘を曲げた状態で肩の横に固定された。次には、足の裏が台の縁に取りつけた足置きに添えられる。軸は固定されていても、足首の伸縮によってカタカタと音を立てながら角度を変えて動く。少し脚を開いた状態で足首が括られた。
 身動きがとれなくなると、台にはリクライニング機能がついているようで、脚が視野に入る角度まで背中が起こされた。足首を固定していた部分は腰もとへとスライドして、浴室でのときと同じく、躰の中心をさらけだす恰好をさせられた。
「吉村さん」
「抵抗するのはいい。それも一興だ。だが、おまえはどんなことも快感に変えられる。おれの期待を裏切るな」
 何を期待されているのだろう。セックスで感じること?
 吉村は頭上に来ると、胸のふくらみをつかんだ。両側同時に押しつぶすようにしながら揺らされる。
 快感というよりは心地よさのなか、胸が火照ってきた。そう気づいたときはすでに心地よさは快感に変換されていたのだろう。吉村の手が下にずれて乳房をすくうと、乳首が親指で弾かれる。その感触に毬亜は過敏に反応した。
 あっ。
 悲鳴と一緒に胸がびくっと跳ねる。続けて感度を確かめるようにつつかれ、そのたびにぴくりと背中が浮く。そうしてふと吉村の顔がおりてきた。引き締まった顎が毬亜の顔の上を通りすぎ、それを追うと赤く尖った自分の乳首が見えた。それが吉村の口のなかに消えていく。
 あ、ああっ。
 吉村の口内はキスのときよりも熱く感じて、なんとも云えない感触で含まれた。くちびるが持つ力の限りで摘まれ、吉村はそのまま顔を上げる。力の限界まで伸びた乳首がぷるんと吉村の口内から飛びだした。
 あ、あ、ふっ。
 何度も繰り返されて、その摩擦はじわじわと責め苦のような快感を生む。片方は指の腹が絶えず摩撫(まぶ)している。毬亜の躰は自然とよじれた。すると、体内からとくんと蜜がこぼれるのがわかった。
 吉村は反対側と入れ替わって同じようにした。焦れったすぎておかしくなりそうだった。
「吉村さん!」
「乳首だけで逝ける女もいる。おまえは逝くことを知った。できるはずだ」
 そう云った吉村は、胸の頂(いただき)を乳輪まで大きく口に含むと吸いついた。
 あっああんっ。
 躰がふるえ、さらに甘咬みしながら吸引されると胸が跳ねる。それからはバウンドの連続だった。痛みはまったくなくて、ただ逝くことへの刺激になる。触られてもいない躰の中心が快楽に侵されていく。浴室でそこを口に含まれた記憶と、いま胸の突起を含まれていることがリンクした。
「吉村さ……もう……んふ――っ」
 訴えている間に、吉村の舌が乳首に巻きついた。新たな感覚は一気に毬亜の感度を上昇させた。
 足先がぴんと張る。そして、舌で転がされたとたん。
 あ、あ、あ、あ、んんああああ――っ。
 噴きだすことさえなかったが、毬亜は漏らした感触を覚えながら達した。
 吉村が顔を上げても腰の痙攣は止まらない。そんな余韻に任せているさなか。
「乳首で逝けるとはたまんないねぇ。吉村くん、きみのテクニックなのか、それともマリちゃんの感度がいいのか?」
 毬亜の鼓動も思考も凍りついた。

 その声は聞き憶えがあった。
 見ないほうがいいと思っていても、毬亜は閉じていた目をぱっと開いてしまう。
 この台に寝かされたとき脚の向こうに見えていたのは、幅が三メートルくらいありそうな巨大な鏡のはずだった。浴室も鏡張りされていたし、女性を羞恥に晒し、精神的にも弄ぶ場所だとは充分わかっていた。どうせ吉村には見えるのであって、自分で自分を見なければそれですむ。そう思っていたのに。
「いやっ」
 脚を閉じようとしても固定バンドはびくともしない。躰がうねるだけで、手も同じだった。
「マリちゃん、挑発するねぇ」
 涎(よだれ)でもたらしていそうな声音だった。
 どういう仕組みなのか、いまや鏡ではなく透きとおったガラスでしかない仕切りの向こうで、その声の主、倉田は毬亜の躰をしっかりと眺めていた。
 その隣室には倉田だけではない、ほかにもクラブの客や知らない顔も混じって五人ほど、そのうえ京蔵までもがそこにいた。顔を確認しただけで表情まで見る勇気はなかった。倉田と同じで、にやついた顔、もしくは舌なめずりをしていそうな顔しかないだろう。
 台が鏡寄りに置かれていたのは、適当にそうされていたのではなく見物人のためだったのだ。
「もっとも。腰を揺らして、触られてもいないそこがどんどん濡れてヒクヒクしているのにはかなわないけどね」
 案の定、倉田の発言に興じた笑い声が響く。声はガラス越しでも鮮明に聞こえてくる。
 無駄だとわかっていても受けいれたくなくて、再度毬亜は四肢に力を込める。けれど、台がわずかに揺れるだけでなんにもならない。
「しみのない、せっかくの白い肌に痣(あざ)ができるぞ」
 頭上から横に移動してきた吉村が胸の下に手を置き、押しあげながらしぼるようにつかむ。毬亜に目を向けた吉村は相変わらず表情がない。
「お風呂でも見られてたの?」
 囁くように訊ねてみた。
「それを聞いてどうする? いま見られていることだけで充分だと思うが」
 吉村は非情だった。違う、情を求めるほうがどうかしている。最初から。
「吉村さっ……放して!」
「おまえに自由はない。云っただろう、おまえは男のためにある。丹破一家からは逃れられない。家族のために身を挺(てい)した母親のことを思うなら、逃げるなどできないはずだ」
 吉村が提示した脅迫材料は毬亜を縛りつける。
 吉村の顔が滲んで見えなくなった。
「男を喜ばせてみろ」
 そう愚弄した吉村は続けて――
「それとも、おれを、と云ったほうが感じるか」
 とつぶやくように云いながら、手のひらを毬亜のこめかみに添わせた。
 それが乱暴なら背中を向けることもできるだろうに、撫でた手は少しも冷たくない。
「どうせ泣くなら快楽で啼け」
 吉村は胸から腹部へと右手を滑らせていく。おへそを通ってまっすぐ秘部におりた。濡れそぼつ入り口にぐるりと指先を這わせ、そのうちの一本がずぶりと体内に入ってくる。
 うっ。
 毬亜はくちびるを咬んだ。
 医療のためでもセックスのためでも、体内に侵入されたのは今日がはじめてで、それなのに易々と受け入れて感じることが浅ましく思えた。母のように誰彼かまわず触れさせても平気になる、そんな快楽に負けるという堕落まではしたくない。
 それなのに、吉村の指はクチュクチュと音を立て、毬亜の快楽の証しを突きつける。声はどうにか封じることはできても、腰がびくつくことは抑えられない。指がどこを目指しているのか明白で、確実に毬亜の弱点へと近づいている。
「い、やっ」
 そこを捕らえられると、どうにもならないことを突きつけられる。堪えきれない悲鳴は拒絶の言葉に変換したものの、その実、すでにここで一度、快楽の果てを経たというのはだれの目にも明らかだ。
 吉村がそこから指を引っこめて、ほっとしたのは一瞬、またぐっとなかに進んでそこを擦る。
 はっ。
 そして、また引き下がり弱点を目指す。そんな律動がゆっくりと繰り返される。快楽点に到達したときの感度がだんだんと増している。ぴくりと跳ねる腰は、ぶるっと痙攣するような反応に変わっていく。嫌らしい音も粘り気を帯びたものに変わっていた。
「あうっ、いや、いやっ」
 切羽詰まった毬亜の声が部屋に響くと、それまで静かだった見物人たちが野次を飛ばす。
「“いや”と云いながらあの音はどうだ」
「洪水だな」
「ヴァージンとは思えない反応だ」
「倉田社長がおっしゃっていましたが、吉村くんのテクニックと女の根っからの淫乱性が融合した結果でしょうな」
「さすがに母娘(おやこ)だ」
「実に楽しみだ」
「吉村くん、どうだね」
 倉田が逸(はや)った様子で吉村に呼びかけた。
「見られているとおりですよ。陰核は勃起(ぼっき)して、なかからは次から次に溢れてくる。白濁した粘液と襞が指に絡みついています。感度は申し分ないでしょう」
「逝かせてやれ」
 吉村の返事を受け、即座に発したのは京蔵だった。
「はい」
 聞くに堪えない会話の間、耳もふさげず、毬亜は嗚咽を堪(こら)えきれなかった。加えて、吉村の指に煽られる感覚のせいで、最大限で感じているようなあられもない嬌声が発生している。
 いや、破廉恥(はれんち)にも毬亜は本当に感じているのかもしれない。
 グチュグチュッという粘着音はひどくなるばかりで、吉村は毬亜を追い立てる。もう解放してもらいたい。
 だれかと抱き合いたいと思ったことはなくて、働いているときに客から触られることを心地よく感じたこともない。それなのに、吉村とはキスではじめて触れ合って、そうされても嫌じゃなかった。
 毬亜は吉村を裏の人間だから怖がっていたわけではなくて、吉村から目が離せない自分が怖かったのかもしれない。だから、わずかなことに縋ろうとする。ついさっき、涙を拭った手が冷たくないと感じたように。
 どんな期待を毬亜が叶えられるのか。助けを求めちゃいけない。それが、思う存分、吉村に感じろと云うことなら、それでもいい。
 毬亜は快楽に負けた。
「も、……だめっ」
 腰がせりあがる。吉村は左手の指で突起に触れた。
「あ、やっ……あ、あ、だ、め……っ」
 さらに差しだすように腰を突きあげると、吉村は毬亜の二つの弱点を容赦なく揺さぶる。突起が剥きだしにされたような感覚になり、吉村はぐりっと捏ねた。そこに集まった神経は繊細すぎた。
「あうっ、漏れちゃうっ」
 そう叫んだ瞬間に、体内の快楽点も捏ねられた。
 やぁあああ――っ。
 歓声は遙か向こうに聞こえ、毬亜は快楽の高みに到達して目が眩む。ぶるぶると腰がふるえ、止めようもなく、それはなんなのか、噴いているというよりは、躰の奥からあらゆる水分を吸いとられるような感覚に堕ちた。

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