長編〓連載2005.02.07.~2011.05.25.全159節
足掛け3年強。およそで885000字・原稿用紙2800枚。ようやく完結。
400枚で充分な単行本ができるので、3年で7冊書けたと思えばいい感じ。
こんな長いものはもう書けません。というより、1から10まで書けば、どれくらいでも長くできます。軽く倍は行くんじゃないかと。
ただ、それをやったら小説ではなくなるというか…日記or日誌? 面白味が欠ける。とはいえ、そこをどう面白く書き続けられるかっていうのも才能ですね。某海の名を持った有名一家の話みたいに。
純愛ジュールでは、成長とか心の昇華とか、そこを目指して描くというスタンスなので、まず本編で詳しく日常を書くというのはしません。省いたところはかなりあって…過程がわかっているんだから、あとはある程度記しておけば想像できるだろう、的な。
要望によっては推敲時点で書き加えることがあるかも。
書き始めたきっかけは、ずっとまえに言ったことがあるように、当時の連載【ONLY ONE】がシリアスであまりに重たくて、気分的に浮上するために元気な女の子を書きたいということで、叶多に白羽の矢。
当初はファーストステップあたりの感じで軽く終わらせるつもりでした。
裏社会のこともごくごく軽くすませようとしていたのに、キャラと背景が捨てられなくなったというか。
正直なところ、こんなに登場人物がたくさんいるなか、脇役まで一人一人のキャラがこれほど明確に私の中に生きている物語はありません。長い付き合いのせいだろうか…
というわけで、ファーストステップ開始時はラストステップの結末は考えていませんでした。
考え始めたのは第4話あたり(和久井が出てきた頃)
せっかくの、裏裏社会、やくざもの、水商売ものひっくるめてハードボイルドできそうな背景。
かねてからの妄想していた世界観でしたし、とことんその背景を利用しよう!ということに。
#155の戒斗のセリフなんて普通の恋愛小説では書けませんから。
ただ、プロットが作成できない奏井。頭の中で考えて、それを完璧に文章にしないと次が明確にならないという。
だから設定が変わることもしばし。ラストの拉致事件では、考えていたものと結果ではかなりシーンが違っています。
CLOSERの連載を始めて、その筋書きの影響もあり。
大ざっぱなビジョンはありましたが、曽祖父が次々世代に託した策略を細かく考えだしたのもセカンドステップに入った頃なので、そこから、それまで登場した人物の設定を逆算した形で繋ぎました。
4世代にわたっているのでややこしい設定ではありますが、3世代では生存率が高くて、『誰か生きてるだろ、聞けば済むことじゃん』で終わってしまいます。
途中で完結まで到達できるのか、という不安は無きにしも非ず。
特に謎を絡めていたので。前出のように、先がどう繋げられるのかというのははっきり自分でもわからないままでしたし。
ただ、どうにかなる?絶対に書ける!という根拠のない自信をもって完結まで。
ラストステップ更新開始後(1年前)、DOOR末尾に注意書きを明記しましたが、これはコメントがきっかけです。
Ⅰ.登場人物が多すぎる。
Ⅱ.裏社会とバンドという設定がごちゃごちゃしすぎる。
Ⅲ.つまり無駄に長い
というような。
主人公たちだけじゃなく脇役含めて視点が変わりますし、よっぽど物語を好きになっていただけないと入りにくいという難点もあります。
連載当初は考えていなかったという点を差し引いて、ただの過程で長く引っ張っていたのではなく、ラストステップ終話にすべて集結させるためですし、その指摘は的外れというか。端役はともかく、数多い脇役に無駄な登場人物はいません。むしろ、登場人物の役割に違和感や唐突感はなかったと思います。
よって全15話の中に無駄な話は一つもないです。
また、なぜ戒斗がバンドマンである必要があったのか、ということについては、背景も精神的(感情的には未熟ですが)にもミスターパーフェクトだからこそ、“音楽”という決して一番と位置付けられることのない曖昧な価値が必要でした。
【ONLY~】で戒斗のセリフにあるように、『有吏の名をもってしても動かせないもの、残せないものが音楽』なのです。
何より、戒斗に祐真という背景が必要だった。この点は連載する前からの決定事項でした。
祐真を好きで好きでたまらない気持ち。失うことの怖さ。そこに“歌”があるから、気持ちは強く切なくなる。
違う観点から考えると、叶多を置き去りにして、目指すもの、あるいはやりたいことが音楽じゃなく、サラリーマンに落ち着くには(たとえトップを目指すということでも、戒斗の好きなバイク事業を興すということでも)普通すぎて、加えて戒斗が既に持っている力でどうにもなりそうで理由が弱い。
あと、セカンドステップの結末も難点つきました。
これはファーストステップ終話時点ですでに出来上がっていた話です。
感情をうまく表せない戒斗がどうやって苦しいことを叶多に訴えるのか。殻が破れるのか。
戒斗の懺悔も必要な気持ちだったし、ただのDVになってもしょうがないし、いまでもあれが一番効果的だったと思っています。
あれもDVに違いなく、性について特殊な考えがあるんだと捉えられましたけど、特殊ではなく、躰を繋ぐ=心を繋ぐ、それは純愛ジュールが語るアイの伝え方の一つです。CLOSERも然り。感情的に不器用な男ほど特に。
シュガーを好きで読んでくださっていたのなら尚更、そういう戒斗の心情を読み取っていただきたかったなと。
さて、当初はここまで込み入ったものになると考えていなかったというのは前出の通り。
裏の裏社会というのは中学の頃からの妄想でしたが、それに拍車をかけたのが『花咲ける青少年』
スケールの大きい漫画です。
さすがに世界を舞台にするまでの知識はなく、国内の話にとどまりましたが、それでもけっこう大げさな設定。
見えないところでいろんな謀略があって世の中は動いてるんだよっていう世界を描きたかった。
その点では、シュガーでしか読めない世界がうまく描けたのではないかと。
謎な部分は取りこぼしなく、フォローできたと思います。
登場人物には愛着がありますので、ぼちぼちとエキストラや独立した物語で書けていけたらと思っています。
2011.05.25.完結作品